◎ ろう材の開発研究
当研究室では,これまでにろう付が困難であったいろいろな材料を対象に,それを可能にするろう材の開発を行っています。これまでに開発した代表的なろう材をいくつか紹介します。
1) ぜい化層の少ない高強度ニッケル基ろう材の開発
平成13年度から現在まで,NASDA(現,JAXA)との共同研究で,H2Aロケット噴射ノズル部の組み立て用ろう材として,Ni-Cr-Mn-Siろう材を開発しました。(特許申請中 特願2004-33967)
これまでに用いられている,高価なパラジウムろう材に比して安価で常温・高温強度に優れており,今後が期待されます。また,JIS規格のニッケル基ろう材と比べても,ぜい化層が少なく高強度で信頼性の高い継ぎ手が得られています。下図に,新開発NiろうとBNi-5とパラジウムろうを用いてステンレス鋼丸棒ろう付け継ぎ手の引張強さを示します。(このHP内の関連記事も参照下さい。)
2) マグネシウム合金ろう付用フラックスおよびろう材の開発
これまで,マグネシウム合金のろう付は出来ないという考えが一般的でした。しかし,当研究室では,これに挑戦して,理論に裏付けされた新しいフラックスとろう材を開発しました。特に,新開発のフラックスは,アメリカ溶接学会誌(2008.3月号)の中でも絶賛されており,今後が楽しみなフラックスとして紹介されています。このフラックスとろう材は特許登録されています(特許第3888537,2006)。是非ご利用下さい。マグネシウム合金の表面酸化皮膜を完璧に除去できるフラックスです。(このHP内の記事も併せてご覧下さい。)
3) 低融点Agろうの開発
銀ろうは非常に多くの分野で用いられているろう材です。銀ろう材に要求される特性として,出来るだけ融点が低く,塑性加工ができ,高強度の継ぎ手が供給できる等があります。現在,JIS規格にある銀ろうで最低融点の銀ろうはBAg-1で約620℃となっています。かなり低融点ろうですが,有害なカドミウムを24%も含有していることが最大の問題点でした。
今回,当研究室では,融点が600℃以下で,カドミウムを含有せず,塑性加工ができ,高強度の継ぎ手を作製できる新しい銀ろうを開発しました。特許登録されています(特許第4093322, 2008.3)。是非,使用して下さい。下に,ろう付温度650℃および融点でSUS304丸棒をろう付した時の引張強さを示します。BAg-1ろうと比較しています。また,広がりの様子も示していますが,ぬれ性も良好であります。加えて,開発銀ろう材は融点以下の580℃でもろう付可能であり,かなり高強度継ぎ手が得られています。
SUS304 丸棒突き合わせろう付継ぎ手の引張強さ
SUS304板上での広がり面積とその様子